矢崎存美
<ぶたぶたシリーズ> |
ぶたぶた (デュアル文庫) ぶたぶたの休日 (デュアル文庫) 刑事ぶたぶた (デュアル文庫) クリスマスのぶたぶた (徳間書店) ぶたぶた日記 (光文社文庫) ぶたぶたのいる場所 (光文社文庫) |
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ぶたぶた |
ストーリィ
山崎ぶたぶた。ピンクの色したぬいぐるみです。普通に生活しています。社会に順応しています。色々な仕事をこなすぶたぶたの物語。
「初恋」:ベビーシッターのぶたぶた 「最高の贈り物」:ぬいぐるみ売り場のぶたぶた 「しらふの客」:タクシー運転手のぶたぶた 「ストレンジ ガーデン」:フランス料理シェフのぶたぶた 「銀色のプール」:旅人のぶたぶた 「追う者、追われるもの」:私立探偵に尾行されるぶたぶた 「殺られ屋」:殺し屋ならぬ殺られ屋のぶたぶた 「ただいま」:記憶喪失のぶたぶた 「桜色を探しに」:ぶたぶたを探して… |
感想
とにかく可愛い! マンガで書かれた可愛さではありません。文字で表現された可愛さです。これ程までに可愛さを表現できるものかと、驚きすら覚えます。ぶたぶたの一挙手一投足、その表現に惹きつけられます。手をぱふぱふ叩く、鼻の先がもくもく動く、まじまじ、むくむく、などなど。この手の表現、大好きです! また、大きさを巧く表現しているんです。ぶたぶたと、彼(!)が持っている物とを比較することによって、読者がイメージしやすい表現を作り上げている。それがまた可愛いの! この異常な設定が受け入れやすいのは、ぶたぶたの言葉遣いが丁寧だからではないでしょうか? 人と人(ぶた?)の付き合いはカガミ。ぶたぶたの丁寧な言葉に、ついつい…って感じなのかな〜、と思います。そして、最後に感動が訪れる。さいこ〜です!
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刑事ぶたぶた |
ストーリィ
新人の刑事、立川くんが配属されたところに居る不思議な上司。その名も山崎ぶたぶたさん。可愛い、ピンク色の…ぶたのぬいぐるみです。階級は主任。あ、大丈夫、ちゃんと喋りますし、仕事はしっかりこなしますから。ぬいぐるみなだけに、特殊捜査もお得意です。赤ん坊誘拐事件を中心に、幾つもの事件が彼らを待っています。
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感想
やっぱり可愛いぶたぶたさんですが、少し落ち着いてしまった感じです。私が慣れてしまったのか、設定や表現の問題か。ぶたぶたさんが警察という組織、そして人々にすっかり受け入れられているんです。立川くんも、最初こそ途惑い、葛藤がありますが、すぐに受け入れてしまう。こうなると、この特異な設定が十分に強調されているとは言い難いでしょう。無論それでも可愛さは健在ですし、面白い。でも、もっともっと、と思ってしまうのが読者ですね。
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ぶたぶたの休日 |
ストーリィ
山崎ぶたぶた。その正体は一体…。占い師代理のぶたぶた。定食屋の手伝いをするぶたぶた。刑事のぶたぶた。その不思議な存在を、周囲は当たり前のことと、とらえています。それも不思議。初めて見る人は興味を惹かれるのです。ぶたぶたさんは、そんな人にも温かい存在なのです。
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感想
ぶたのぬいぐるみが喋る。食べる。飲む。働く。そんな不可思議な状況を、慣れている人いない人。そのギャップが作品を面白くしています。初めて見る人は受け入れられない。強く興味を惹かれる。しかし周囲は平然と。初めて見る人にとっては、それが余計に不思議なのですね。いろいろな葛藤がそこで生じる。でも、ぶたぶたさんは平然と。普段通り。ほのぼの、って感じのシリーズ作品です。
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クリスマスのぶたぶた |
ストーリィ
町はクリスマス。ぶたぶたは今日もサンタの格好で、せっせと働きます。バイト帰りの女子大生、お昼時のOL、塾に通う小学生、などなど。多くの人が、ぶたぶたからクリスマスを届けて貰います。
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感想
短編集ですが、その収束のさせ方は、いかにもクリスマスらしく仕上がっています。そして作品全体の収束は、もっともっとクリスマスらしいもの。あれ、他の作品とちょっと違うな…と思ったら、成る程、でした。一番好きなエピソードはケーキ屋でアルバイトをしている貴子のお話。とっても感動的でした。イブからクリスマスへ、その限られた時間を、しっかり表現しているところも良いですね。
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ぶたぶた日記 |
ストーリィ
名前は山崎ぶたぶた。中年の男性です。しかしその外見は…ぶた。可愛いピンクのぬいぐるみです。カルチャースクールへエッセイを学びに来たぶたぶたさんと、同じ教室に通う生徒たちとのふれあいを描いたファンタジックな作品。
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感想
とにかく、とにかく、とにかく可愛い! 誰が何と云おうと、犯罪的な可愛さです。そして、登場人物の葛藤は、ひたすらに楽しい。人と変わらぬ言動のぶた。しかもぬいぐるみ。その受け入れ難い状況に、戸惑ったり、妄想を抱いたり、平静を保とうとしたり。それもこれもぶたぶたが可愛いから。ただただ文字を連ねただけなのに、どうしてこれほど可愛いと思えるのでしょう。とてもイメージしやすいんです。もちろん可愛さだけではない。心がキュンとする作品です。でもでも、やっぱり可愛く、とっても笑えてしまうんです。だから忠告。この本は、決してバスや電車の中、図書館でも読んではいけません。アヤシイ人と間違えられること、確実です。
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ぶたぶたのいる場所 |
ストーリィ
ホテルに潜むピンクのぬいぐるみ。その名も山崎ぶたぶた。その姿を目にした者は、ごく僅か。しかし、ぶたぶたは確実に存在します。
「人形の夜 〜春の物語」:記念企画のお芝居は「オセロー」だった 「柔らかな奇跡 〜夏の物語」:純な恋人と記念に高級ホテルへ来たのだが… 「不機嫌なデズデモーナ 〜秋の物語」:好奇心といたずら心でオーディションへ 「ありすの迷宮ホテル 〜冬の物語」:缶詰になったホテルで幻を見た 「小さき者と大きな空 〜再び、春の物語」:いざ上演、「オセロー」 |
感想
ぶたぶたがあんまり出てきません。ちょっと消化不良気味です。世界はもちろんぶたぶたですが、中心にぶたぶたがいる訳ではなく、オセローのお芝居が存在しているのです。そのプロセスを綴った一年間。しかもぶたぶたその裏方的存在でもあり、出演者でもありということで、どうしても影が薄くなりがち。私がこの設定に慣れてきてしまったこともあるかもしれません。
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