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呉の衰退 |
孫権は老いてその鋭さを失い、策はやることなすこと裏目に出ていた。
長期にわたって孫権の身辺に有ってその挙動に目を光らせていた
張昭、顧擁、諸葛瑾はすでに亡く股肱の臣陸遜も遠く江陵の地にいた。
孫権は太子の孫和、孫覇を同列に扱い身分に優劣を付けなかったため、
次第に派閥が形成されてきた。
孫権がもっとも寵愛していた歩夫人は魯班、魯育という二人の娘を産んだが、
男を産まなかったため魯班は勢力の衰退を怖れた。
そして孫権の溺愛を盾にみずからの保身に走った。
太子孫和の母王夫人と仲が悪かったため、嘘を吹き込んだ。
| パパ。たいへんよ! 孫和と王夫人が宗廟でパパの病気治癒の祈りをしていると公言して、 実は叔父の家に篭って何か企んでいたそうよ。 なんてひどいんでしょう! |
孫権は何の疑いもなくこれを信じた
孫権は怒り、王夫人は憂死した。そして太子孫和は疎んじられた。
陸遜は国の危機を悟った。
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どうか太子、孫和さまの地位を不動のものとし、 その待遇も孫覇さまと差別をお付けになりますように!! お二方をしかるべき地位になさって始めて、 すべての臣下は心を安んじることができるのです。 叩頭流血して申し上げる次第です!!! |
陸遜は何度も上奏し、自ら都に出て、その得失を論じようとしたが、
孫権はその許可を与えないばかりか、
陸遜の親族が孫和と謀っていると言いがかりを付け、陸遜を流罪にした。
更に使者を遣わし何度も問責したため陸遜は憤りのうちに死去した。
しばらくして、孫和の無実が分かり、
孫権は勢力の分裂を回復しようと
孫和を皇太子の地位から王の地位に格下げし孫覇には自殺を命じた。
孫権はみずから国の衰退の基を作ってしまった。
孫権は後事を諸葛格に託し、この世を去った。