本格ミステリィ



「そもそも本格って何?」
 英語では「pazzlar story」と表現される様に、本来本格とは謎解きパズルなのです。著者が出した問題、即ちトリックを解決編の前に読者が解くことが出来るかどうか。一番分かりやすい本格の例は「読者への挑戦状」ってのが付いてる類の作品ですね。で、パズルですから色々ルールや取り決めなんかも考えられてるのです。それが有名な「ノックスの十戒」とか「ヴァン・ダインの二十則」ってのになります。


「本格の定義って何?」
 普段平気で、本格、本格と云っていますが、その定義を考えると意外にむつかしいもの。拡大解釈すれば、読んだ人が「これは本格だ!」と思えば本格なのでしょう。

 例えば私の場合、こんな作品に対して「本格だ!」と思います。

 人里離れた山荘に、
 手紙で呼び出された人々が集まるなどして、
 大雨で橋が落ちなどのトラブルが発生して孤立、
 そんな時に殺人事件が発生し、
 魅力的でシャープな探偵が登場、
 しかし事件は連続殺人を予感させ探偵を翻弄、
 最後は探偵が皆を一室に集めて推理ショー、
 トリックをあばき「犯人はあなたです!」

しかし、こんな感じではない作品に対しても「本格だなぁ…」と感じることだってあるのです。


「割り算の美学派 と 雰囲気派」
 光原百合さんは広い意味で「提示された伏線や手がかりが、最後にすべてエレガントに収束して余りを残さない」という条件を備えていることが本格と考えてらっしゃるそうです。土屋隆夫さんも「割り算の美学(剰余を出さない)」こと仰っているそうです。

 新本格の旗手、綾辻行人さんは「僕にとって本格とは雰囲気」という意味のことを書いておられるそうで、雰囲気を重視される様です。

 井上夢人さんは「何が本格ミステリィなのかよく分からない」と発言なさっています。(島田荘司さんらとの対談で) 岡嶋二人として本格ミステリィを量産してきた井上さんがです。

 しかし、例えば、雰囲気派の綾辻さんも、割り算の美学を全く気にしていない訳ではないと思います。雰囲気があることは前提であり、その上で割り切れて欲しいのだと思います。少なくとも私は、雰囲気がない作品で割り切れていてもどこか本格らしくない、と感じます。

 これは本格ミステリィ、と分類すること自体に、意味がある訳ではありません。ミステリィ好きという人種は、往々にしてジャンル分けや順位付けが好きなもの。多くの作品に出会えば出会うほど、それをしたくなるのです。そこで線を引く。その時に本格の領域が定まります。読者(著者)それぞれ、定義が異なるのも当然ですよね。



謝辞(皆様ありがとうございます)
 yuri様の発言を沢山引用しています。



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